2つのロタウイルスワクチン:ロタリックスとロタテックについて

   現在ロタウイルス胃腸炎に対するワクチンが2種類あり、どのように違うのかまとまてみました。

   効果に関しては、5価のロタテックの優位性を強調しているサイトもありますが、同時期に同じ基準で検討したものがないので単純に比較はできず、総合的にみてほぼ同等の効果と思われます。当院では、今のところ明らかな差がないと判断し接種回数が2回のロタリックスを採用しています。

   下の表は、細かいことを抜きにした違いをまとめてみました。

   
  ロタリックス ロタテック
接種回数
2回
3回
接種期間

初回接種は6週以降15週未満に開始
4週間以上間隔をあけて24週までに2回目接種

初回接種は6週以降15週未満に開始
4週間以上間隔をあけて32週までに2回目3回目を接種
接種量
1.5ml(やや粘稠)
2ml(粘稠でない)
価格
当院15300円(消費税込み)
当院10200円(消費税込み)

効果

国内治験データ

ロタウイルス胃腸炎(重症度を問わない)予防効果79.3%

重度のロタウイルス胃腸炎の予防効果91.6%

ロタウイルス胃腸炎(重症度を問わない)予防効果74.5%

重度のロタウイルス胃腸炎の予防効果100%

製薬メーカー

GlaxoSmithKline(英国)

MSD(米国)

 

 

以下補足として細かい違いをまとめて?みました

 ロタウイルスは3層の殻構造から出来ていて、中間の殻に存在するタンパク(VP6)の違いによりA〜G群の7種類に分類され、A〜C群は人と人以外の動物に感染しますが、D〜G群は人以外の動物にのみ感染します。人のロタウイルス感染症の多くはA群によるものが一般的で、このA群ロタウイルスはさらに一番外側の殻に存在する2種類のタンパク(VP4とVP7)の種類によっていくつかの型の分類されます。VP7で決定されるG型は15種類(G1〜G15)、VP4で決定されるP型は28種類(P[1]〜P[28])が現在までに確認されており、このG型とP型の組み合わせで多くの種類(株)が存在します。

  ただし、ロタウイルス胃腸炎発症の90%以上が、G1P[8]、G2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]の5種類の組み合わせ株に起因しています。この中でG1P[8]が最も多く存在する株といわれていますが、年ごとや地域により株の分布には変化がみられます。

  ロタリックスは、ヒトロタウイルスG1P[8]を弱毒化した生ワクチンですが、G1P[8]だけでなく2回接種することでG2P[4]、G3P[8]、G4P[8]、G9P[8]に対しても予防効果が期待できます(G2P[4]に対する予防効果が弱いと言われていますが、G2P[4]による重症ロタウイルス胃腸炎に対する予防効果は80%以上となっています)。

  ロタテックは、ウシロタウイルス(人に対する病原性が低い)のVP7・VP4タンパクをヒトロタウイルスのG1、G2、G3、G4、P[8]に組み替えた生ワクチンです。

  ロタリックスは1種類の株に由来するので1価ワクチン(タンパクの種類でいえばG1とP[8]の2価ともいえなくもない)、ロタテックは5種類のタンパクを組み込んだので5価ワクチンと言われています。

  5価の方が種類も多いので1価より優れているようにも思えますが、実際にロタウイルス胃腸炎に対する総合的な予防効果に大差は認められていないのが現状です。今後、ワクチン接種率が上がりロタウイル胃腸炎の原因ウイルス株分布が変化してきた場合に効果に差がでてくる可能性は考えられますが、どのようになるかは予想はできません。

  2種類のワクチンに関して、効果に関していろいろなデータが報告されていますが、我々医師でもどちらの効果が優れているか簡単に判断できない、どちらも優れた予防効果があるワクチンといえます。

 

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